「雑踏」

 

 

 

 

都会の雑踏の中

             何もかもがあわただしく。

 

「オマエ何してんの?」

 

「何って?」

 

歩道橋の隅に腰をかけている学生と思われる女。

 

なんでわかるかって?   

              制服きてるから。

 

「何かじってんだよ。」

 

彼女の手中にはゴツゴツしたものがにぎられている。

  

「何ってこれの事?」

 

彼女は手元を見ながら答えた。

 

「にがうりだよ。」

 

「ゴーヤってやつか?」

 

男はけげんそうに眉をひそめた。

 

「そんなの食ってうまいか?」

 

 

「すっごく、まずいね。」

 

そう言いながらも女はニガウリをかじる。

 

「じゃぁ、なんで食ってんだ?なんかの×ゲームか?」

 

ふぞろいのショートカットをゆらして  女は首を振る。

 

「だってゴーヤ、好きなんだもん。」

 

「はぁーっ・・・・・・?」

 

車の音がひっきりなしに耳にとどく。

 

「まずいのに好きなのか?」

 

女は逆に男を不思議な目でみかえした。

 

「何か変?」

 

なんてゆうか男は感覚がマヒしてきた。

 

「だってアレじゃんか!まずいのに好きってわけわかんないじゃん。

食べ物は食うものだー。」

 

 

女はゴーヤを差し出した。

 

「見た目が好きなんだよ。」

 

 緑のゴーヤ。 ゴツゴツしてて。   確かにそれはキレイで。    

  

      なにか力を秘めているような気がする。

                    

                     ちょうど森のような。

 

 

 「それだけかよ。」

              男はぼそっと言った。   

 

  

 「ううん、あと匂いとかも。」

 

青臭いような。鼻が緑色に染まりそうな。水を感じるゴーヤの匂い。

 

「それだけかよ。」

 

 なんとなく認めたくなかった。

 

「あと、形とかもね。」

 

 見た目とは反対にそれは冷たくて。   

 

「でも普通、食べ物の価値は味を重視するだろ!」

 

女はまたゴーヤをかじりはじめる。

 

「そういう概念にとらわれているから、人間って進歩がないんだよね。

 

       

        何コイツ・・・・・・・・・・・・・。

 

  これが男の正直な感想。

 

 「変な奴。」

 

 「何よ?だったらあっちの人みたいに変な女がいると思って

     そのまま通り過ぎればいいじゃない?

  そんなのにいちいち興味持って声かけるあなたの方が、よっぽど変よ!」               

   

 女は男を凝視した。

  「まっ、変ってよく言われるけどっ! (プイッ) 」

 

 男は布でできたバックを大事そうに抱えている。バックに何かついている。

 赤と黄・・・・・。    絵の具?

 

 

「描かせてくれ。」

 

 男はおもむろにバックを開き始めた。

 

 「はっ!?」

 

 「オレは竹内正弘。 美術部3年だ。」

  

 今度は女が眉をひそめる番だった。

                     「何、同類?」

             

   

   すでに男は鉛筆を動かし始めている。

 

     「しゃべんないで、食ってろ。

                  

                    それに同志と呼べ!」

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      都会のあわただしい雑踏のなか  

            

 

                女は一人ゴーヤをかじる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  あとがき   

 

 ちーッス! 美莉里です。

     もうおわかりでしょうが、前回の詩と小説のテーマは

  さわやかぁーで、今回のはズバリ芸術の秋にちなんで

 

   両方とも芸術です。  

 

  いつも 応援してくださっている皆さん、ありがとうございます。

   

  これからもがんばりますんでっ!        

 

  「受験生がこんなことしてていいの?」

                 と思われる方、

 「おっけ〜っ☆ 超〜余裕〜!」

 

 

                  なわけありません。

    

  そっちもちゃんとやってます。         最近は。ね・・・。

 

  高校入ったら、柔道部か文芸に入りたいんです。  ふふふ。

 

 作品についてはまさか自分でもゴーヤが出てくるなんて。

                        びっくりです!

 

 物語も詩も全てその場インスピレーションで作っている人・・・・・・。

 

                 お付き合いありがとうございました。