僕は、だれ?
不安定。
僕はいるの?
すけちゃってて・・・・・・・・・・・・・・・。
夏の墓
著者 美莉里
「太郎?太郎?まったくまた虫取り?」
セミに声に誘われ太郎は山へゆく。
夏の緑ってきれいだ。風が目に見える。さっきからTシャツが肌に張り付いている。
「ミーン、ミンミン、ミーン。」
となりの電柱から声がしているけど太郎は見向きもしなかった。
どうせミンミンぜみだろ?太郎が狙っているのは数の多いミンミンぜみなんかじゃない。
この辺では珍しいいわゆるレアな・・。
「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ。」
あーいう声を出す奴を狙っているんだ。太郎は網を握る手に力を入れた。
耳にも・・・・。
どこにいる?逃がすものか。
20分もさがしたんだ。こんな夏の日の20分は長いんだ!!足がだるい・・・。麦わら帽子だって役に立っているのかわからないぐらいだ。
こんな日に一番元気なのはおひさま・・・。声のする方に歩いていった。
森の中の墓地の前にきた。太郎はちゅうちょしなかった。
この墓地は太郎の庭だ。ほら、あの木。
本当は声をたどってそう簡単にあんなちいさなせみを見つけられるわけないのだが
太郎にはあったのだな。セミとりの才能ってやつが。木の模様なのかセミの茶色なのか見分けるのだって難しい。
自分で思う。よくみっけたな。今日は運もいいみたいだ。そうっと足音をたてずに近つく。
「ツクツクボーシ ツクツクボーシ・・・」
自分の影でかくさないように・・・・。そうだ、今だ!網をすっとおろし・・・・・・・。
「がばっ!」
一瞬の勝負だった。セミの本能の方が勝ったみたいだ。せみは墓地の奥へはいっていった。
木々がざわめく・・・。
普通の子供ならここでひきかえすだろう。墓地の中でセミとりなんていろいろな意味でやらないだろう。
しかし、
「くっそー、どこいった!」
太郎は墓地の中へと足を進めていったのだ。
ここは小さな太郎の石造りの庭だ。
どこにとまったんだ?ちょうちょを追いかけるのとはわけがちがう。墓石が光ってて余計見ずらい。
ないてくんなきゃ、わかんねーよな。やっぱ。一周してそう思う。
白い雲があいかわわらずのっそり進んでいる。確かこの辺だったんだけどな。もういないのかな?
あきらめかけていたそのとき
「ツクツク、ボーシ」
太郎は目を見開いた。
ちかいぞ。耳にツーンとくるくらいに。
「ツクツク・・。」
さあ、もっともっとないておくれ。才能をフル回転させ太郎は見つけた。墓石にとまるセミを。
墓石だって太郎にとっちゃただの石だったから太郎はとっさに網を下ろした。
「
ギィーギィー」ついにとったぞ!!
太郎はてのなかのツクツクボウシにみいった。すけるような白い羽。そしてすばやく虫かごにほうった。
さぁこれで思い残すことは無い。ミッちゃんにも自慢できる。かえってスイカでも食べよう。
そしてまわれ右をしながら太郎はお墓の花入れから一本落ちていた花をさしてやった。黄色い小さな菊だった。
誰かが入れてやったんだな。太郎は思う。だって僕もじいちゃんのに入れたもん。
帰り道太郎の虫かごの中からツクツクボウシは音をたて音を立て。出口まできたとき「坊や。」と声をかけられた
そこには白髪のおじいさんがいた。やさしそうな人だった。太郎がぽかんとしていると、
「ありがとな。」といった。そしてつづける。
「すべて消えていってしまう中にたったひとつでも自分がいた証拠があることがどれだけうれしいことか・・・。
死んだら、わかるさ。」
おじいさんはそういうと墓地の中へと消えていった。太朗はとくにきにしなかった。
けど、あのやさしく遠くを見ていた目がとても気に入ってた。
早く帰んないとかあちゃんがおこっているだろうなぁ。太朗は走った。
それがいけなかった。まがりかどをつっきったら車が・・・・・。
「ドカン・・・・。」それだけのことだった。
僕は誰・・・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「リリリリリリ。」
朝の光だ。太朗は手探りで。目覚ましを止めた。ぼーっとしている。
そして今日から夏休みなんだから目覚ましをかける必要が無かったことを思い出す。
夢を見ていたなぁ・・・・・・・・・・。
なんのユメだっけ?
そうちらっと思ったがやめて太朗はベットから降りた。
子供はユメの事なんか気にしない。
もっと、キョウミ深い現実(いま)があるからだ。かといって大人も気にしない。
現実(いま)におわれているからね。結局ユメのことなんか誰一人気にしやしないんだ。
ツクツクボウシをとらなきゃ・・・・・。
Fin
あとがき
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
なんか、みなさんを期待させちゃったみたいで、内心あせってる美莉里です。
見てのとうりそんなうまくないですよ。こういうのは趣味な人と趣味じゃない人が極端にわかれるのですが
どうでしたか?趣味でなかったひと、ごめんなさい。
私の趣味です。
(笑)
解説
このユメは二人のユメです。一人は太朗。もう一人は死んだおじいさんが子供時代をふりかえってみてるユメです。
せみとり大好き!