もう7月です。「夏がきたぞっ!!」って感じですね。言われなくてもみなさん

    知っていますね(笑)

    文体変わった?と思われる方、いらっしゃるとおもいます。描写を変えてみま

    した。今まではわりと文をブチブチ切って描写していたのですが、表現の幅

   みたいのが決められちゃうんでつなげてみました。でも、やっぱり切ったほうが

    イメージは強調される感じがします。どうしようかな?と考えたのですが今年の

 夏は『万能な女』で、はじけようとしているのでどっちも極めようと思いました。

 (意味不明です。すみません。ただ、数学克服計画を立てているというだけ

の話です。)                厳しいけどホットな話をめざして。

 

  

 

 

 

 

 

 

  

 

 

私用でバスを利用した。たいした用事ではなかった。

 家に客人が来ることがわかったので茶菓子でも買おうと思ったのだった。

 車は車検に出していたのだが、そのことに僕はまったく苛立ちを覚える

 

 ことも無く、まぁたまにはバスもいいかとバスが来る10分前には停留所に

並んでいた。待つものはみな、夏の日差しが眩しそうだった。

 

 

バスの中は涼しかった。火照ったアスファルトを箱型に密閉された空間が

 汗ばむ何人もの乗客を乗せている。なのに、である。僕はタバコを吸えない 

ことが残念であった。過ぎゆく見慣れた景色をみていた。バスの中も、電車

の中もそうであるのだががお互いがお互いに興味を持たないことが、暗黙の

了解であるかのようなそんな雰囲気がある。学校にも職場にもない、そんな

雰囲気が。バスは走っては止まり、走っては止まりの独特なリズムを繰り返

している。たまにバス停で立っている客も、こちらから降りる客もいないとき

『通過します。』というアナウンスがかかり、電光の文字が音と共に表示を変え

る。一瞬だけ崩されるリズムが面白い。まだ昼前であったからだろうか?一人

で乗るものが多く、その大部分は人とかかわりを持たない空間でのみ生まれる、

 

 特有の『隙』を顔に浮かべながらされるままに揺れていた。この雰囲気がだめな

人も意外に多い。空気を震わせるべきものの音しかしない、平和を感じるあま

りに感情のない空気。電車などであると席が向かいあっているためにその居心

地の悪さが増すらしい。目のやりばに困るかの ように、上に吊るされていたり

貼ってあったりする広告をつまらなそうに眺める人をよく見かける。

 

意外にもろく、お互いに興味を持たないという『暗黙のルールめいたなにか』が

 破られた。乗客が目をむけた先には一人の青年が座っていた。

 高校生か、夏の青年は年齢よりずっと若くみえるので、大学生か、社会人

 かも知れない。彼はなにやらぶつぶつ呟いていた。ぶつぶつと聞こえるのは

 声が小さいからではない。言葉が支離滅裂としているからだ。注意してみると

行動もどことなくおかしいことに乗客は気づく。手はせわしなく 頭をかいたり、

顔をさわったり、また膝にもどされたりしている。

 脳に障害があるのだと思った。僕は学生の頃何度かボランティアに参加

 した。所属していた学部が社会学だったこともあったのかもしれない

 老人ホーム、子どもの家、環境保全運動、なんでもやった。日記のような

 その記録をレポートにしていた覚えがある。彼に向けられる乗客の目は

 けして温かいものではなかった。こわかったのかもしれない。彼の後ろ

 の席に座っているピンクのキャミソールを着たおねえちゃんが、はっと

 息を呑むのがから見てとれた。さっきとはうってかわって、居心地

 の悪い沈黙がただよっていた。

そんなものなのかもしれない。僕は思った。ボランティア活動を通して

かかわった人達の笑顔がふっと浮かんでくる。いくらボランティアなどを

してふれあうことができたとしても、やっぱりそれはボランティアという

肩書きにたよってしまっているのだ。

 『バスに揺られる彼』と、『それをみる僕』は他人である。けしてよい

 

 状況ではないが、僕に何ができるだろう?そんなものなんだ。いくらバリ

 アフリー社会と言われていても、そこにいるのは『他人』と『他人』ほか

 ならない。いくら心から安えらげる場所が存在しようとも、それはほんの

 一部に過ぎないのだ。障害者やお年寄りのことをいっているのではない。

 誰だって社会の中で自分一人であること。

 

信号待ちで止まった。運転手がエンジンを切る。ここで、本当に何も聞こえない

 音を出すこともためらわれる、心地よい静寂が訪れるはずだった。いつもなら。

 静寂は訪れなかった。代わりに彼の声が冷たく響きわたるだけだった。もはや

 エンジンの音が彼の声を掻き消すことさえも期待できなかった。僕の隣のおばさん

 がなにやらけがわらしいものをみるようなそれとは違ったが、運転手もちらちらと

 振り返る。険悪な空気が肌をかすめた。

 その時、僕は誰かがすうっと息を吸い込むおとを聞いたような気がした。

 

次の瞬間のことだった。

 

ハミングが聞こえた。

 

 

最初は何がおこったのだかわからなかった。誰かがうたっているのだ。少女だった。

 ただ、好きなうたを機嫌よく口ずさんでいるかのように。いかにも涼しげな服を着て

 いるなんでもない少女だった。最初は小さな声であったそれは、だんだん大きくなり

 信号が青になりバスがまた動き出す頃には、完全に私たちを包み込んでいた。

 

気のせいではなかった。彼女の歌声は青年の声にあわせているのだ。

 青年の声が大きくなれば、私たちはまた、優しいハミングに包まれる。

 青年が口を閉じれば、さりげなくその歌声は消えてゆく。青年の声。

 一歩遅れて追いかけるように少女のハミング。僕にとってはいいドラ

 イブだった。

 

 いつのまにか青年が消え、やがて少女も降りた。

 

 少女は何がしたかったのだろう?あのハミングは誰にむけらたものだ

 ったのだろう?そもそも目的なんてあったのだろうか?

 

 少女の歌声には、そんなことなんて全然気にしないという

                      

                              伸びやかさがあった。

 

 

  

 

 それでも、僕の耳にはいつまでもあのハミングが繰り返されていた。

 

 

 

                誰もいないアスファルトを夏の陽炎が揺らしていた ―――

 

 

  

 

 

    

    

長い文章を最後まで読みすすめて下さった方、本当にありがとうございます。

    

 『冬目ファン涙!管理人さん修行の旅』というドラマにおされ、ねぇ、神様?

   季節がズレズレ草だったので、なにか夏らしいものを書いてみようかと思

いました。去年『夏の墓』を書いたのを思い出しました。 私にとって夏と

いえばスイカとかき氷と森でした。じゃぁ、今年はなにでいこう?似たような

雰囲気にはしたくないな。と考えました。うみネタ・・・。沙蔵さんがかっさら

っていったのを思い出しました。考えたあげく主人公をバスに乗せてしまい

ました。何か中身のあるものを書こうというのが毎回のテーマ―でしたので

居心地の悪い雰囲気もつくってしまいました。

 

                                ご了承下さいませ

 

       ではでは みなさんよい夏を

                 

                           see you again !