<<赤城康彦さん執筆の第5話

前回のあらすじ・・

学園アイドルのPONが美莉里と一緒に旅行に行きたいが為に

ペンション『森の宿屋』でのお泊まりな旅行を提案したのだが、

PONと二人での旅行には気が引ける美莉里が友人の明日美、

それに本作の主人公鳴海とその友人でんでろ、それと美莉里の所属している

生徒会の会長であるミュンを引き連れての参加となった。

そしたら偶然、鳴海の姉の凪とその彼氏の赤城、それに生徒側からしたら

「勘弁してくれ」状態の学園の保健室の先生である沙蔵も同じ宿に泊まるというのだ。

後、押し売り状態で付いてきた絹馬超も一緒に・・・・。

果たしてどうなるこうなる??


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-1- 部屋で

 

「とりあえず温泉いこっか、凄いらしいぜ」

でんでろが部屋で茶をすすりながらくつろいでいる同室の男性陣に声を掛けた。

でんでろは実は温泉好きなのだ。

本来ならば凪とも会えないような旅行に友人の誘いだからと言って来るような

男ではないのだが、今回はこの「人口温泉」に4文字に引かれて参加を決めたのだった。

(結果的には凪とも一緒の宿だが)

「そうだな、行こっか。ミュンさん、PONさん、行きませんか??」

鳴海は同室の先輩方に声を掛けた。

「いや、諸君等で先に入ってくれたまえ。私はゴージャスな食事を終えた後に

美莉里君と小一時間話し込んだ後にでも生徒会長のミュン君と一緒に

入ることにするよ」

PONが答える。

「こいつ・・・美莉里さんが目当てだったのか!!!」

鳴海は戦慄を覚えた。ライバルと呼ぶにはあまりにも強大なライバルである。

「ちくしょう、これはヤバイぜ。やっぱり今夜が勝負だ!絶対に告白する!!」

鳴海は心を決した。折角の旅行であるし(保護者のようなモン付きだが)、

シチュエーション的にも申し分ない環境が整っている。鳴海の中で何かが弾けた。

そう、片思いで続いている人間の背中を後押しするのはいつだって危機感なのである。

「・・・まぁでんでろ君に鳴海君、ゆっくりしてきたまえ」

「わかりました、楽しみっすわ〜」

鳴海とでんでろは部屋を後にした。

 

 

「ゴメン、PON君。」

ミュンが何故か謝った。

「ゴメン、僕、温泉アレルギーだから・・・」

ミュンの表情は怒りとも悲しみとも違うが、ハッピーな感情ではないのだけは

確かだった。

「・・・いーや、気にしてないよ。」

PONが答えた。

しばらく沈黙が流れた後、PONが口を開いた。

「折角学校から離れたんだ、気楽にいっても良いんじゃないかな。

実はもう一部屋別にとっているんだ、風呂付きの部屋なんだけど

温泉からお湯は引いてる、自由に使ってくれて構わないよ」

「・・・・・!!!!」

ミュンの目が普段の2倍くらいに見開いた。

そう、PONは知っていたのだ。実はミュンが男装の麗人であるということを。

PONが入学して最初に目を奪われたのがミュンだったのだ。

姿格好はどう見ても男性だったミュンを見ると胸が高鳴るのを感じたのだ。

流石にPONとしても、自分の本能に懐疑的にならずにはいられなくなり、

独自に探偵を雇い、ミュンを尾行させミュンが女性だということを突き止めたのだ。

それが一緒に入学してから一ヶ月経ったくらいの話なので、それ以来、

2年以上もPONは、ミュンの秘密を誰にも話していないのである・・・・。

「ありがとう」

ミュンの声が部屋に小さく流れた。

PONの耳にも聞こえたかどうかわからないが・・・。

 

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-2- 赤城と凪

「びっくりしたな〜、一緒の宿なんて・・」

凪は赤城に向かって言った。

「そうだな、オレがバトルした相手まで鳴海の関係者だからな〜」

赤城は茶を畳に寝っころがりながら答えた。

赤城の中では『赤い彗星』として喫した初黒星のコトで頭が一杯だった。

「ちくしょう、あの女、次会うときはガードレールにキスさしてやるぜ」

なとどは思っていないが、凪との関係にしろ今回のバトルにしろ、

自分の思い通りに進まないことに対しての苛立ちを感じていた。

「ねぇ、誰が美莉里ちゃんだと思う?あたしはきっと、あの大人しそうな

女の子がそうだと思うんだけど」

「ん?そうなー。鳴海が好きになるってことはやっぱりああいうタイプなの

かもしれんな。」

赤城としては、実のところ、会う度に二人の会話が鳴海のコトになるのが

耐えられない部分でもあるのだ。

凪の彼氏は自分だと胸を張って言えないくらいに最近、

その気持ちが強くなっていた・・・。

「オレ、風呂入ってくる」


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-3- 温泉

「あーいー湯だな〜、最高だわ〜」

でんでろ上機嫌。

「気分的にはこのままクリニックだな〜?鳴海」

「まだ行けないだろうが」

鳴海が答えた。

クリニックとは何か?それは一般的にヘルスと呼ばれる18禁の施設のことである。

それが何故か福岡ではクリニックという呼び名になるらしいことを筆者は半年

程前に知った。。

「・・・・・でんでろ、真面目な話しても良いか?」

鳴海が切り出した。

「ん?何??」

「あのな・・・実はな・・・」

鳴海は今日告白をするということをでんでろにだけは告げておこうと

思ったのだが、いざ伝える段になると上手く言えないでいた。

「美莉里ちゃんのコト?」

でんでろの思わぬ切り返しに鳴海は焦った。

「お、おぅ。それでな・・・」

「告白する段取りはつけてるよ、明日美ともその話は付いてるから安心してろ」

「・・・・・・!!!」

なんということだろう、でんでろと明日美は初めからそのつもりで

この旅行に参加しているのだった。

「悪い・・・」

鳴海は温泉の湯船のお湯で一度顔を洗ってから一言言った。

でんでろの話では告白タイムは一緒に晩飯を食べた後にゲーム大会を開く

ので、その間に上手い具合に抜けれる段取りを作るらしく、合図があったら

美莉里を連れて外に出て告白をしろというモノだった。


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-4- 決戦前

「マスター、僕今日告白しようと思うんです」

何を思ったか、鳴海はペンションの主人である『もり』に思いを告げた。

鳴海としては、本来ならでんでろ言うはずだった台詞をアカの他人である

宿の主人に話すことでケジメを付ける意味合いだったようだ。

「頑張って下さい。あなた方の関係が上手く行くように願っています。」

主人はそういうと、鳴海から離れていき、shigi鴇と杜仲茶に耳打ちしてから

戻ってきた。

「で、誰の料理に細工するんだい??」

もりが鳴海に質問を投げかけた。

「!!!。いえ、そういうつもりじゃなくて、ただ誰かに告げたかっただけなんです」

鳴海は焦った答えた。まさかそんな風に受け取られるとは・・・。

PONは今まで一体このペンションをどういう使い方をしてきたのだろうか。

怖い話だ・・・。

「ブラボー!!聞いたかshigi!杜仲!」

「ええ!感動して涙がチョチョ切れましたよ!!」

shigi鴇が答えた。

「これはなんとしても頑張って貰わなければなりませんね」

杜仲茶も答える。

鳴海は3人と熱い握手をして別れ、食堂に向かった・・・・。

 

 

 

残された3人の会話・・・。

「どう思う?」(もり)

「でもPON坊ちゃんの希望も確かあの美莉里という娘さんだったかと」(shigi)

「うむ」(もり)

「仕方ないですね、あの兄ちゃんには泣いて貰いますかね〜」(杜仲)

「しかし、あの純情を裏切るのも心が痛むな」(shigi)

「けどよー」(杜仲)

「ん、今回は何もせずにしておこう。坊ちゃんの最初の指示では美莉里という

娘さん以外には幻覚キノコ入りで娘さんには媚薬、そして坊ちゃんにはすっぽんの血の

ワインという話だったが、今回は普通に行こう」(もり)

「でも作ってしまった料理はどうしますか?」(shigi)

「運転手とバイク乗りにでも食わせとけ」(もり)

「幻覚キノコは?」(杜仲)

「あのセブンで来たカップルだ」(もり)

「了解!!」(shigi&杜仲)

以上、大人の会話でした。


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-5- オレは主人公

鳴海達は食事を食べ終わった後に男部屋に集まって「UNO」をして楽しんでいた。

そして運命の時間が訪れた。

明日美と一緒に美莉里が夜風にあたってくると外に出たのだ。

でんでろからの合図だ。しきりにウィンクしている。ウィンクと言っても

でんでろは片目でウィンクが出来ないので、両目を開け閉めしていて

面白い顔になっている。

それを見て鳴海は立ち上がって部屋を出ていった。

外に出ると、美莉里が一人でベンチに座って夜空を眺めていた。

「星が綺麗だね」

鳴海はなるべく自然な会話から入ろうと後ろから声を掛けた。

「うん、見て。あれって北斗七星だよね」

「そうだね、確か大熊座の尻尾だったっけ?小熊座だったかな?」

美莉里は笑って、詳しいねと言った後に隣に座って星を見ようと鳴海を勧めた。

鳴海の心の中は実際は星座どころではなく、目の焦点が合わず、美莉里が

『無想転生』していた。

鳴海は美莉里の横に腰を掛けて、顔を見た。綺麗だった。

暗がりの中でそこだけが輝いて見えた。

「普段、オレ等の家からじゃこんな星空はおがめないよね」

「うん、星のない場所が無いくらい・・・。本当に星が降ってきそう。」

「だよね。なんか凄く身近に宇宙を感じるというか・・・・」

鳴海はバクバク言っている心を抑えつつ美莉里との、この場所でしたか

交わせないであろう会話を楽しんだ。

そして・・・鳴海は勇気を振り絞って想いの言葉を口にした・・・。

「美莉里さん、言ってもいいかな」

鳴海は切り出した。

「ん?何??」

美莉里は少しドキドキしながら答えた。美莉里としても鳴海と二人でベンチに

座って夜空を見上げている状況がそれこそ緊張的な状態なのだ。

それをなるべく察知されまいとありきたりの受け答えをしていたが、

実のところは、明日美が去った後に鳴海が現れた時点で何かが起こっていると

感じていたのだ。

自分にとって、記念日になるかもしれない何かが・・・。

鳴海は少し意気を吸い込んで、3つに見える北斗七星が一つに重なるのを

確認してから美莉里の目を見て言った。

「僕は予備校で初めて声を掛けて貰ったときから君が好きだ!

君だけが好きだ!!世界で一番好きだ!!」

鳴海は一気に言った後、再び北斗七星を見上げた。

大丈夫、1個しか見えない。

「・・・・・・・」

美莉里は驚き、そして俯いた。

そして長い沈黙が流れた後に鳴海が美莉里を見つめ、再び口を開いた。

「僕と付き合って欲しい、本気だから」

その言葉を聞いて間髪入れずに美莉里が答えた。

「はい」

 

 

二人の頭上の満点の星と満月が暗闇の中で彼らだけを照らし出した。

二人の別々の影が一つに重なり、永遠の時間が流れた・・・・。

 

 

 

(終)?

 

 

 

 

 

 

 

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あとがき

ん〜、上手くまとめられませんわ〜(^^;;

皆さんからの流れを汚さずに最後を締め切れた自信は

無いですが、ラストということで結果を書かせていただきました。

如何でしょうか・・・(^^;

仕掛け人より一言

最高でございます!!

岡崎さん、美莉里さん

おめでとー!!