「魔竜大戦・天空剣舞 または戦うおねーさん!」

 

「いたた!」

 ジークフェイルド・ウィクルガドゥアゥラ=オーリィゲンガスジェンクが空から地上に叩きつけられて、大声でうめく。

「わ、わしゃあもうだめじゃあ〜」

「父さん、気弱なことをいわないで!」

「娘よ、わしはもうだめじゃ。か、かたきをとってくれ」

 ジークフェイルドは起き上がれず、駆けつけた愛娘のラーカイラム・ウィクルガドゥアゥラ=オーリィゲンガスジェンクに息も絶え絶えにささやく。

「父さん!」

 ラーカイラムの必死の叫び。かがみこんで、父を担ぎ上げようとする。しかし、それを嘲笑う声。

「麗しき親子愛ね」

 きっ、とラーカイラムが空を見上げるその先に、背に竜の翼、頭に竜の角を生やした竜族の若い女の姿。腕を組み、見下げるようにして、親子を見下ろしている。

 白き衣を身にまとうその竜族の女の容貌は、白い肌に、肌と同じく真っ白な髪をしながら、唇は紅を塗ったように赤く、瞳も同じように、燃えるように赤い。

 まるで天女のように、衣の長い袖をはためかせ、宙に浮いている。

 しかし顔からは天女のような慈悲の心は見えず、氷のような冷たさと、燃えるような闘争心の相反するふたつの感情が入り交じっていた。

 その女は名を、小竜娘(シャオロンニャン)という。

「その麗しき親子愛を遂げさせてあげるわ。一緒に逝きなさい!」

 かっ、と瞳の赤い目が見開かれ、親子に向かい急降下すると同時に、

「雷(ライ)!」

 という叫び。刹那、その手から稲妻がほとばしり、親子に襲い掛かる。

「バリア!」

 ラーカイラムの咄嗟の叫び。それから、天地を揺るがすような凄まじいまでの爆発がおこり、きのこ雲が天高くのぼった。そのきのこ雲から小竜娘が飛び出し、地上の様子を見下ろす。

 雲が晴れれば、無傷の親子の周辺に結界バリアが張られ稲妻を防いでた。

(しくじったか)

 苦々しく口元をゆがめ、小竜娘は再度稲妻を親子に見舞おうとするが、今度はラーカイラムが反撃とばかりに跳躍し逆襲をしかけ。

 手刀を振るうように掌を振れば、真空のかまいたちの刃が小竜娘に襲い掛かる。

「こしゃくな!」

 小竜娘も同じように掌を振り、真空のかまいたちの刃をこなごなに打ち砕き、その勢いのままラーカイラムに襲い掛かる。

 はっ、と息つく間もなくその長い爪ががラーカイラムの顔面に迫り。かろうじて顔をずらしかわすも、髪の毛が数本ぱらぱらと落ちた。

「お返しよ!」

 小竜娘が接近したのをこれ幸いと、両掌をその腹に突き出せば、さっきほどではないにしても掌から溢れた気が、どん! と激しく爆発を起こした。しかしラーカイラムは舌打ちをしてすぐに後ろに跳びすさった。

 ラーカイラムの気を察した小竜娘もまた同じように跳びすさって、爆発を免れていた。

 普段おっとりとして穏やかな顔は、今は小竜娘のように殺気立ち。ふたりは天空で睨みあっている。

 

 竜族が魔族に戦争をしかけた。

 竜族と魔族は長年争ってきた仲だが、一進一退で決着はつかず戦争は一休みに入っていたが。今度こそ決着をつけんと竜族は大挙魔族の世界に攻め込んできた。

 それは、ラーカイラムの妹の嫁入り先が決まって、やれめでたいと父と喜んでいるときであった。

「おのれ竜族め!」

 めでたい気分をぶち壊された父は激怒。娘のラーカイラムとともに迎撃軍に身を投じ竜族と戦った。しかし、その前に現れたのは、強敵小竜娘。

 竜族の王、竜王の娘で竜族の王女になる。父の野心を遂げさせんと王女の身ながら最前線に身を投じ、その強力な竜族の力をもって魔族軍をかたっぱしから打ち破っていった。

 父のジークフェイルドも無念ながら小竜娘に破れ、地に叩き落されてしまったという次第。

「ラーカイラムが小竜娘と戦っているぞ!」

「王女がこしゃくな魔族の女と戦っているぞ!」

 ところどころで竜魔両族のものたちの、そんな叫び声がこだまし、ラーカイラムと小竜娘のまわりにはたくさんのギャラリーが詰め掛けてきた。

 ギャラリーたちも互いの敵を睨み、魔界の空は、はちきれんばかりの緊張の糸が張り巡らされて、少しでもそれに触れれば一気に大爆発を起こしかねなかった。

 それを察した小竜娘は左手を挙げ、

「わたしがこの女をたおすまで、一休みしておけ!」

 と竜族の配下に大喝した。その声はよくとおり、鼓膜はおろか心まで突き破りそうなほどの気高さがあった。ラーカイラムは侮辱を感じ、怒りに目を光らせた。

「いいの? お手伝いさんなしで」

「ふんッ。汝(われ)ごときに配下の手は借りぬ」

 余裕しゃくしゃくでの小竜娘。さらに、

「本来ならわたしみずから手を下すほどのものでもない。名誉に思え」

 とまでいう。

「それはそれは、光栄のいたりでござます。王女様」

「頭が高い!」

 さっ、と小竜娘の攻撃。いつの間にか手には気でつくりあげた剣が握られ、赤々と燃えるように赤く輝いている。

 さっさっさ、と三度連続の突き。だが難なくかわしながら軽口をたたくラーカイラム。

「どういたしました王女様。師範代がなってないようですわね」

「これはほんのお遊びだ。まだまだ本気ではない」

「あらそうでしたの。お遊びがすぎると火傷を負ってしまいましてよ。お気をつけ遊ばせ」

「気遣い無用!」

「そうでした。経験が豊富そうですもの、わたしが気を遣うまでもないことでしたわ」

「わたしを尻軽な浮かれ女のようにいうな!」

「いえいえ、尻軽などとんでもない。あなたさまのお尻はとっても重いことでしょうし。夫となる殿方はお気の毒に」

 剣をかわされながら、相手の思いのままに毒舌にさらされた小竜娘はますますキレて、剣をことさらにぶんぶん振り回す。しかし冷静を欠いたせいか、さらに命中率は落ちラーカイラムにもてあそばれることになってしまった。

 魔族のギャラリーはやんやの大喝采。

「すごいぞラーカイラム!」

「ラーカイラムの毒舌ならむしろオレが受けたい!」

「でも、すでに人妻になってしまって。ああ、ダンナがうらやましい」

 などなど、エムっ気丸出しでラーカイラム大絶賛。対して竜族は王女がなぶられるよに小ばかにされているのを見てみんな黙り込んで顔を真っ赤にしている。

 しかしまさか、あのラーカイラムの妹が人間を相手に口で負けて、そのために嫁にゆくことになったなど、彼らはまだ知る由もない。

 父はというと、どうにか痛みも引いて、どっこいしょ、と地面にあぐらをかいて娘の戦いを見上げている。

「ほほう、やるもんじゃ」

 娘の健闘が父として嬉しく、にこにこしている。

 そこに目をつけた小竜娘。ラーカイラムに突きを続けて放ちながら、絶妙の剣さばきで攻撃の矛先ならぬ剣先を、ジークフェイルドに向けた。

「炎(ヤン)!」

 という叫びとともに、紅蓮の炎が剣先からほとばしったかと思うと、紅蓮の炎は大口を開けた竜の姿となって、ジークフェイルドに襲い掛かる。

「なんじゃと!」 

 まさか一騎打ちの最中突然違う相手を攻めるなど思いもしなかったお人よしの父は驚き、逃げようとするが素早く動こうとすると痛みが走り思うように動けない。

 いたた、とじたばたする父を炎の竜が飲み込もうとする。

「危ない!」

 父の危険を感じたラーカイラムは咄嗟に急降下して助けにゆく。しかし、炎の竜は次に自分に襲い掛かってきた。

「ああ!」

 ラーカイラムの悲痛な叫び。同時に父の「うわ〜!」という悲鳴。

 意表を突かれた親子はともに炎の竜に飲み込まれてしまった。

「うふふ。火傷をしたのはどちらかしら」

 冷たい、赤い瞳がきらりと光り。真っ白な髪がほこらしげに風になびく。

 魔族は、卑怯者め! と怒りの声を上げ竜族に突撃体勢をとった。もう全面戦争だ。どっちかが滅びるまで。

 竜族も同じように突撃体勢をとり、王女の指示を待っている。

 小竜娘は勝ち誇ったように真っ赤な剣を高々と掲げ、魔族への突撃命令をくだそうとする。

 そのとき。

「ちょっとまったあ!」

 という男子高校生の声。

 人間の婿の今西恭平がジークフェイルドをかついで、小竜娘に向かって叫んでいる。その姿は真っ黒にすすけていて、服もぼろぼろ。しかし、ぴんぴんしている。

 ジークフェイルドは恭平に降ろされて、あたた、とつぶやきながら地面にしゃがみこんだ。どうやら無事なようだ。

「なにい……」

 突然のことに驚いた小竜娘。しかしまた、

「卑怯者。恥を知れ!」 

 という若い娘の高飛車な叫び。見れば、ラーカイラムをかばって妹のるーかが炎の竜を防いでいた。

「くっ、お前らはラーカイラムの妹夫婦だな。人間の夫は契約を交わし不死身となっているという……」

 なるほどジークフェイルドをかばって炎の竜に飲まれ、その隙に助け。それと同時にるーかは姉にかわって炎の竜を受け止めた、というわけか。

 思わぬ邪魔者が現れ、小竜娘は歯軋りした。

 このふたり、普段人間界にいるが、ふと魔界に遊びにきてみれば。魔族は竜族と派手に戦争をかましていて驚いた。驚きつつも家族の姿を捜し求めれば、父は傷つき姉は竜族の王女と一騎打ち。

 さらに驚いたのはその不意打ちで。ふたりはそれぞれ父と姉を咄嗟にかばった。というわけだ。

「この白髪女のおっぺけぺー! 正々堂々と勝負しやがれー!」

 恭平は真っ黒な顔に怒気を含めて、もろ手をあげて怒りの声をぶつける。

「うざいぞ、キモい人間が!」

「ああー、キモいってったなー。身体の傷はなおっても、心の傷はなおらないんだぞー。この人でなし!」

「もともと人ではないわ! それより黙ってろ、姉上の一騎打ちはまだ終わっておらぬ!」

 若さに合わぬ高飛車な言葉遣いで、るーかが恭平を黙らせる。

「わかってるよー。でもなんかいってやらなきゃ悔しいじゃねーか」

「お前のいうことはあまりにもアホすぎて聞くに堪えぬ」

「へへん、でもそれでオレと一緒になることになったじゃん」

「な、なに。べ、別にお、お前なんか、お前なんかー」

「お前なんか、なんだって?」

「うわーん、これ以上いわせないでー」

 なんだか突然夫婦雛、じゃない、夫婦漫才がはじまった。そんなふたりに微笑ましさを覚え、ラーカイラムとジークフェイルドはにっこり微笑む。

(やっぱり、お似合いのふたりだなあ)

「ありがとうるーかちゃん。おねーさん勇気百倍。とっても元気が出ちゃった」

「お姉ちゃん、頑張って!」

「うん、頑張る!」

「ええい、わたしを忘れるな!」

 目の前で団らんが繰り広げられることに侮辱された思いの小竜娘は、激しく突きを繰り出してくる。

「あら、忘れてなんかいませんわ。相手を間違えたことを」

「その減らず口をきけないようにしてやる」

「おや、違いましたかしら。もしかして、わたしと父を見間違えたのですか。娘は父に似るといいますし、見間違えてもいたしかたございませんわね」

「ふん、そうだな。娘は父に似るというからな」

「まあ、珍しく意見が一致しましたわね」

 これは、小竜娘はラーカイラムの対処法を心得たようだ、もう毒舌で相手の気をくじくことはできないだろう。

「あんまり使いたくはないのですけれど」 

 と、気を充実させて剣をつくりあげる。剣、と書いたが、その剣は小竜娘の真っ赤な炎の剣と対照的に、真っ白な羽毛のような剣だった。しかし見た目の柔らかさとはうらはらに、真っ赤な炎の剣を受け止めてもびくともしない頑強さがあった。

「おお、すげえ! 香港映画のワイヤーアクション観てるみてーだ!」

 思わずうなる恭平。

 いま魔界の空で、美女がふたり、剣をまじえているが。それは優雅に剣舞を舞っているようだ。それはまさに香港映画のワイヤーアクションのような迫力と優雅さと美しさを兼ね備えていた。

「ああそういえばこないだ映画見に行ってたらあんな香港映画で、ちゃんちゃんのちょいとかいう女優に鼻の下伸ばしてたなあ、おい」

 といつの間にか恭平のそばに来てたるーかが、その頬をつねる。それをいうならチャン・ツィーだろ、と突っ込みたいが頬をつねられてうまくしゃべれない。

 それはさておき、ラーカイラムと小竜娘の剣の対決は激しさを増してくる。

 お互いに剣を繰り出しながら、喋のように舞い、蜂のように刺す。動きは速さを増しながら一向に鈍らず、ますます冴えてさえいるようで、その優雅な動き、まるで天空でバレエを踊っているようにも見える。

 竜魔両族、ともに無駄口はたたかず、ふたりの姿に見惚れながら一騎打ちを見守っている。

 戦いは一進一退。なかなか勝負がつかないように見えた。

 そうなってくると勝負が進むにつれて決め手となるのが精神力。いかにラーカイラムの剣術の腕が達者であろうと、気迫に勝る小竜娘が徐々に徐々に追いつめてくる。

 口では勝てないことはわかったので、何もいわず無言の本気モードで凄まじいまでに剣を繰り出してくる。はじめこそ攻守ともに互角であったが、ラーカイラムは次第に守勢一方になってくる。

(このままではいけない。なんとかしなければ)

 しゅっ、と小竜娘の剣が突き出される。負けじとラーカイラムも剣を突き出せば、

 キン!

 という鋭い、鼓膜を突き刺すような金属音。それぞれ手を伸ばし剣を突き出し、切っ先をあわせたまま空中で姿勢を固める。そのままの姿勢で、少しも動かない。

 かと思えばそのままゆるりと、くるくると回転を始める。お互いの気を剣を通じてぶつけ合っているようだ。互いに渾身の力をぶつけあっているようで、硬直した体勢のままひたいから汗がしたたり落ちてきている。

 もしこれに負ければ相手の気に弾き飛ばされ、体勢を立て直す間もなく相手の剣の餌食となろう。

 回転しながらも互い目は外さない。しかし気迫に勝る小竜娘が有利なようで、ラーカイラムの手の振るえが徐々に徐々に大きくなりつつあった。

 このままでは気に弾き飛ばされてしまう。

(これ以上持ちこたえられない。こうなれば、いちかばちか)

 意を決したラーカイラム。不意に小竜娘に向かって、にこ、と微笑んだ。

(なに。なんのつもりだ)

 意表を突かれ、一瞬気を緩めてしまった。その隙を逃さず、すかさずラーカイラムは剣を引き、勢いをつけて小竜娘の顔面に向かって体ごとの強烈な突きを食らわそうとする。

「そう来たか!」

 吼えつつ小竜娘は脚を180度縦に折り広げ、高度を下げて顔面への突きをかわすとともに剣を振り上げる。

「おおっ!」

 周囲でこだまする叫び声の中、ふたりとふたりの剣はそのまま交差して、振り向き互いを見据える。見据えながらともに顔をしかめている。

 見れば互いに右肩を斬られ、血がしたたっている。

 だがどちらもやめるつもりはなさそうで、次の手を繰り出そうとした。

 その時。

「そこまで!」

 という天空を揺るがす大喝が響いた。

 何事だと、みんな大喝の方を向けば、そこにはいつの間に現れたのか、美髭公ともいうべき威厳溢れる白い髭を伸ばした仙人風の老人がいた。

「あれは竜王」

「ええっ」

 ジークフェイルドの言葉にるーかと恭平は驚き、竜王をまじまじと見据える。

(娘を助けに来たのか)

 誰しもがそう思った。竜王は小竜娘とラーカイラムを交互に見据えると、ふん! と怒ったように鼻を鳴らした。

 この、ふん! と鼻を鳴らしただけなのに、周囲はまるで威厳に縛られたように身動き一つも取れないでいる。それだけに竜王の強さもわかろうというものだ。

 しかし竜王は意外にも、

「勝負はおあずけじゃ」

 という。

「さっきからふたりの戦いを見ておったが、まだまだ未熟よのう。未熟者同士の一騎打ちでこの竜族と魔族の戦争のケリがつくなど、大恥もいいところじゃ」

「申し訳ありませんお父様」

 さすがの小竜娘も父の威厳の前では子猫のようにおとなしい。剣を消し、身をかがめ父にうやうやしく跪く。

「そなたは己の未熟さもわきまえずひとり先走り、あまつさえ竜族の代表であるかのように魔族の女と一騎打ちをした。それだけでも罪は大きいのに、もしこの一騎打ちに敗れれば我ら竜族は『未熟者を先陣に立てた』といい笑いものじゃ」

「勝手な振る舞い、お詫びのしようもありません。どうか、お慈悲を」

 お慈悲を、といいながらも、伏せた顔の中の、その赤い瞳は燃えるように輝いていた。魔族の女にあしらわれ、それを父に叱り飛ばされているのことに我慢できぬほどの屈辱を感じているようだ。

 それがわからぬ竜王ではない。娘の身勝手さに怒りを覚えつつも、ラーカイラムを指差し。

「腕を磨きなおして、またあの女と戦い、倒せ。さすればこれまでのことは水に流そう」

「寛大なお心に感謝いたします」 

「あのー、勝手に決めないでくれますか。わたしには家庭もありますし……」

 呆れるラーカイラム。しかし竜族は無視。

「さっきお父様が言ったとおり、勝負はしばらくあずけよう」

「だからわたしには家庭が……」

「また会う日まで、さらばだ」

 ラーカイラムのいうことなど耳にせず。憤怒に燃える赤い瞳を輝かせて、小竜娘は天空のどこかへと飛び去っていった。

「では魔族の諸君よ、しばしの別れじゃ」

 竜王も娘に続いてどこかへと飛び去ってゆくと、竜族の面々もそれに続く。

 魔界は一時の平和を取り戻した。

 魔界の天空は青く澄み渡り、さっきまで激しい死闘が繰り広げられていたのがウソのように静かだ。

「いやー一時はどうなるかと思ったが、しばらくはのんびりできそうじゃ」

「おとーさん竜族はまた来るのよ。休んでないで戦闘準備整えなおさなきゃいけないんじゃないの」

「おお、そうじゃったそうじゃった」

「ねえねえ、オレ人間界にかえっていいかな?」

「なんかいった?」

 きっ、と恭平をにらむるーか。恭平は苦笑し、わかったよオレも戦うよ、と仕方なしにいう。

 ラーカイラムはというと、

「竜族の人たち、人の話し聞かないし。わたしには家庭があるのに」

 とため息をつき。ダンナに何ていおうかと、竜族の身勝手さにほとほとに困っていた。

 

おわり